子こどもの生きる力を伸ばす

これからの子ども達の生きる未来では、ロボットが人間の代わりに仕事をする場面が増えてきそうです。その中で価値を発揮できるのは、創造的で他者とコラボレーションできる人と言われています。

『「子育て成功への道』」キャシー・ハーシュ=バセック ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ著(扶桑社)では、子供の成功を、“健康で、思慮深く、思いやりがあり、他者と関わって生きる幸せな子供を育て、皆が他者と協力し、創造的で、自分の能力を存分に発揮する責任感溢れる市民となる”こととし、これからの子どもが成功するために必要な能力として、6Csと呼ぶ6つの力(コラボレーション、コミュニケーション、コンテンツ、クリティカルシンキング、クリエイティブイノベーション、コンフィデンス)だと説明しています。

簡単に6つの力を説明すると、
コラボレーション…人とのやりとりする力
コミュニケーション…人とつながる力
コンテンツ…知識
クリティカルシンキング…論理的な思考力
クリエイティブイノベーション…創造する力
コンフィデンス…しなやかな自信です。

この本の中で「アート」というキーワードができてきます。特にクリエイティブイノベーションを説明している中では、「創造を刺激することが大事」であること、そしてその1つの方法として芸術に触れ、創造力を養うことや、自分がアーティストになったつもりで創作活動をすることなどが取り上げられています。
またコンフィデンスについて説明している部分では、失敗しながら自分のできること事を知り、自信を持てるように環境を作ることの大切さが書かれていました。その中で、芸術は正解がなく自分なりに考えることができる分野である、と書かれています。

長男が通う中学校の校長先生に聞いた話によると、生徒達が定期テストを終えた後の授業で先生が間違ったところの解説をしようとすると、生徒から「正解は何ですか?」と聞かれることがあるそうです。先生としては、どこで間違ったのか、どのような考え方をしたのかを振り返ってほしい、でも生徒達は正解を知りたがると言われていました。
大人は社会人になって体験していますが、社会にでると正解がある問題ばかりではありません。その人の見方やその人の立ち位置で、正解が変わることがあります。そしてこれからの時代は、何を問題とするのかを自分で探す必要がでてきました。子ども達は、正解ではなく、自分で考え、自分で感じたことを伝え、そして自分と違う他の意見を知るという過程から学ぶことも大事です。ですから子ども達がこれからの時代を生きる力を伸ばすきっかけとして、勉強だけではなくアートにもっと触れてもらいたいと思っています。

VTS(対話型鑑賞)は、鑑賞法として美術館に取り入れられていますが、正解を答えることではなく、間違ってもいいから意見や感想を出し合うことが大切なんだよということを、子ども達が体験できるところに魅力を感じています。正しい見方のあるアートもありますが、それでも人と違っていていい、間違っていいという気軽なスタンスで自分の感じたことや思ったことを言いやすい環境を作れるのが、アートを使った対話型鑑賞の良いところだと思います。算数の計算のように1+1=2という正解がある問いではなく、「そんな見方もできるよね」と受け止めてもらえるからこそ、恐れず伝えることができるのです。

もし勇気をもって発言したのに、それは間違っていると言われたら、子ども達はどう感じるでしょうか。おそらく、間違うと恥ずかしいから、と何も言えなくなりますよね。それに対して、アートを使った対話型鑑賞の場は、安心感のあるコミュニケーションの場です。実際に体験してみると分かりますが、自分の発言を受け止めてもらうととても嬉しく、発言もしやすくなります。このように、安心安全な場で対話を重ねることで、子ども達は自分が認められたと感じる機会をもち、自己肯定感を育むことにもつながると思います。

上記は、『子どもとアートのある暮らし』の一部を抜粋しています。VTSをはじめ、アート鑑賞についてや、もっと子どもとアートのある暮らしを幅広く知りたいという方は、下記の本をご覧ください。

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